先天性QT 延長症候群
遺伝性QT 延長症候群Romano-Ward 症候群(常染色体優性遺伝)
Jervell and Lange-Nielsen 症候群(常染色体劣性遺伝):先天性聾を伴う
特発性QT 延長症候群
二次性QT 延長症候群
薬物誘発性抗不整脈薬:I 群薬(キニジン,プロカインアミド,ジソピラミドなど)
      III 群薬(アミオダロン,ソタロール,ニフェカラントなど)
向精神薬:フェノチアジン系(クロルプロマジンなど),三環系抗うつ薬など
抗生物質,抗ウイルス薬:エリスロマイシン,アマンタジンなど
抗潰瘍薬:H2 受容体拮抗薬(シメチジンなど)
消化管運動促進薬:シサプリドなど
抗アレルギー薬:テルフェナジンなど
脂質異常症治療薬:プロブコールなど
有機リン中毒
電解質異常低K 血症,低Mg 血症,低Ca 血症
徐脈性不整脈房室ブロック,洞不全症候群
各種心疾患心筋梗塞,急性心筋炎,重症心不全,心筋症
中枢神経疾患クモ膜下出血,頭部外傷,脳血栓症,脳外科手術
代謝異常甲状腺機能低下症,糖尿病,神経性食欲不振症
1.2 二次性QT 延長症候群
 先天性QT 延長症候群以外に,薬剤や徐脈などが原因で二次的にQT 延長が起こり,TdP が発生することがある.これらは二次性QT 延長症候群あるいは後天性
QT 延長症候群と呼ばれる.二次性QT 延長症候群の分類とそれをきたす薬剤や要因は表1 に示した.このうち抗不整脈薬については古くからキニジン失神として知
られている.抗不整脈薬によるTdP の頻度は,2. 0 ~ 8. 8 %とされる.抗不整脈薬以外の非循環器系薬剤である向精神薬,抗生物質,抗真菌薬,抗アレルギー
薬,消化器疾患薬などもQT 延長をきたす.しかし同じ薬剤を用いても,一様にQT 延長をきたすとは限らない.これは薬剤への個体差や感受性の差異があることを示
しており,さらにこの個体差の背景には,心筋のイオンチャネルのレベルでの遺伝子異常や一塩基多型(SNP)が想定されている.実際,二次性QT 延長症候群のな
かには,KCNQ1 やKCNH2(HERG),SCN5Aの遺伝子に変異を認める症例が報告されており,これらの症例は潜在型の先天性QT 延長症候群の亜型である可能性
が示唆されている.

 QT 間隔は心拍数が上昇すると短縮し,低下すると延長する.しかし,ときに徐脈や心室期外収縮などによってRR 間隔が延長すると,著明なQT 延長をきたしTdP
が発生する症例がある.このような徐脈によって正常範囲を超えてQT が延長するものを,徐脈依存性QT 延長症候群と呼び,TdP の原因となる.したがって,洞不全
症候群や房室ブロックなどの徐脈では,徐脈自体に加えQT 延長によるTdP も死因となる.

表1 QT 延長症候群の分類
II. 総論 > 1. QT延長症候群の概論 > 1.2 二次性QT 延長症候群
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【ダイジェスト版】
QT延長症候群(先天性・二次性)とBrugada症候群の診療に関する
ガイドライン(2012年改訂版)

Guidelines for Diagnosis and Management of Patients with Long QT Syndrome and
Brugada Syndrome( JCS 2012)