先天性QT 延長症候群以外に,薬剤や徐脈などが原因で二次的にQT 延長が起こり,TdP が発生することがある.これらは二次性QT 延長症候群あるいは後天性
QT 延長症候群と呼ばれる.二次性QT 延長症候群の分類とそれをきたす薬剤や要因は表1 に示した.このうち抗不整脈薬については古くからキニジン失神として知
られている.抗不整脈薬によるTdP の頻度は,2. 0 ~ 8. 8 %とされる.抗不整脈薬以外の非循環器系薬剤である向精神薬,抗生物質,抗真菌薬,抗アレルギー
薬,消化器疾患薬などもQT 延長をきたす.しかし同じ薬剤を用いても,一様にQT 延長をきたすとは限らない.これは薬剤への個体差や感受性の差異があることを示
しており,さらにこの個体差の背景には,心筋のイオンチャネルのレベルでの遺伝子異常や一塩基多型(SNP)が想定されている.実際,二次性QT 延長症候群のな
かには,KCNQ1 やKCNH2(HERG),SCN5Aの遺伝子に変異を認める症例が報告されており,これらの症例は潜在型の先天性QT 延長症候群の亜型である可能性
が示唆されている.
QT 間隔は心拍数が上昇すると短縮し,低下すると延長する.しかし,ときに徐脈や心室期外収縮などによってRR 間隔が延長すると,著明なQT 延長をきたしTdP
が発生する症例がある.このような徐脈によって正常範囲を超えてQT が延長するものを,徐脈依存性QT 延長症候群と呼び,TdP の原因となる.したがって,洞不全
症候群や房室ブロックなどの徐脈では,徐脈自体に加えQT 延長によるTdP も死因となる.