Romano-Ward 症候群は常染色体優性遺伝形式をとり,患者の子どもには原則として50 %に本症候群の遺伝子が伝えられ,また患者の両親のいずれかに本症候
群の遺伝子を認めると考えられる.
先天性QT 延長症候群は,心筋細胞のイオンチャネル機能や細胞膜構成蛋白の調節に関係する遺伝子の異常が原因とされており,現在では60 ~ 70 %の家系で
遺伝子異常が見つかっている.Romano-Ward 症候群は,現在までに13 個の遺伝子型が報告されており,それが確認された順番にLQT1 ~ LQT13 と呼ばれてい
る.
これまでに報告された多数例の調査では, 90 %以上の症例がLQT1 ~ LQT3 のいずれかであるとされている.また,先天性QT 延長症候群の死亡率は0. 9 ~ 2.
6 %/ 年とされているが,初回発作が突然死である症例もある.近年の遺伝子型による層別化の試みでは,QTc 500 msec 以上のLQT1,LQT2,男性のLQT3 は危
険度が高いとされている.LQT1 患者における心事故の初発年齢はLQT2,LQT3 患者に比較して若く,20 歳以降における心事故の初発は少ないとされている.ま
た,心事故の初発年齢は男性が女性に比較して若く,LQT1 の男性患者の調査では全例が15 歳以下で心事故が発生したという報告がある.β遮断薬の投与は
LQT1,LQT 2 患者の心事故を減少させるが,投与前の心停止を既往歴に持つ例では,β遮断薬投与開始後の5 年間に14 %が致死的な心事故を起こすと報告されて
いる.