先天性QT 延長症候群の治療は,QT 延長に伴って生じる多形性心室頻拍のtorsade de Pointes(TdP)発症時の治療(急性期治療)と,TdP およびこれによる心停
止,突然死予防のための治療(予防治療)に分けられる.
TdP は自然停止する場合と,持続して心室細動に移行する場合がある.心室細動に移行すれば,ただちに電気的除細動が必要となる.TdP の停止と急性再発予
防には硫酸マグネシウムの静注が有効である.徐脈がTdP 発症を助長すれば一時的ペーシングで心拍数を増加させる.再発予防の基本はβ遮断薬であるが,徐脈
の増悪が予測されれば一時的ペーシングを併用する.薬剤誘発性QT 延長症候群に伴うTdP の抑制にはイソプロテレノールによる心拍数の増加が有効であるが,先
天性QT 延長症候群ではTdP発生を助長するため避けるべきである.症例によっては抗不整脈薬(リドカインおよびメキシレチン)がTdP 停止に有効なこともある.なお
低K 血症はTdP 発症を助長するので是正する.