欧米の報告では全症例の72~76 %を男性が占める.45歳未満での突然死の家族歴は全体の22 ~ 55 %の症例に,とくに無症候性では50~70 %に認められると
報告されている.しかし,これら家族歴や性比率は登録の手法によって大きく異なる.無症候性の多くを有症候性の家系から抽出した欧米の研究でこれらの比率が高
いが,主として孤発例が集積されたわが国の登録調査(循環器病委託研究)では男性の比率が94 %と多く,突然死の家族歴を有する例も16 % にとどまっていた.
表2 に日本と欧米のBrugada 症候群の特徴の違いを示す.
心室細動は安静時または夜間睡眠中に生じやすい.委託研究では夜間(20 時~8 時)発症例が66 %を占め,その51 %で急性期に心室期外収縮が認められた.
また心室細動のほかに心房細動(atrial fibrillation:AF)も合併しやすく,有症候性で29 %,無症候性で12 %に心房細動が認められ,そのほとんどが発作性心房細
動であった.さらに冠攣縮性狭心症や神経調節性失神も合併しやすいことが知られており,循環器病委託研究では,冠攣縮性狭心症がアセチルコリンまたはエルゴメ
トリンで20 %前後の症例に誘発されていた.
本症候群ではピルジカイニド,フレカイニド,アジマリンなどのNa チャネル遮断薬投与後に60 ~ 90 %の例でST が上昇し,一部の例では心室性不整脈やT 波交互
脈(T wave alternans)が出現することが知られている.一方,運動負荷中やイソプロテレノール投与中にはST 上昇が改善(正常化)するが,負荷後や投与後には再
上昇する.また60 ~ 80 %の症例で加算平均心電図が陽性となる.心臓電気生理学的検査では2 連発または3 連発の心室早期期外刺激で50 ~ 80 %の症例に多
形性心室頻拍・心室細動が誘発され,その誘発率は無症候性よりも有症候性で有意に高いとされている.循環器病委託研究でも,心室細動誘発率は有症候性が無
症候性に比べて有意に高かった(71 % vs 52 %).