3.3 Brugada 症候群の予後
 これまでの欧米の登録研究では,有症候性の予後は悪く,心室細動からの心蘇生群では17. 4 %/ 年,失神群では6. 2 %/ 年の頻度で,重篤な心事故を発症す
る.わが国の報告でも心室細動からの心蘇生群の再発率は同様に高い.一方,無症候性の発症率に関しては,欧米の報告でも0.6 ~ 3.7 %/ 年の頻度と施設により
違いがある.わが国では,無症候性では0. 5 %前後と報告されている.

 無症候性患者の発症予測の指標の検討では,安静時にタイプ1 心電図が記録される例,男性,心臓電気生理学的検査での心室細動誘発例,突然死家族歴などが
心事故の有意な予測因子として知られている.とくにBrugada らは,心臓電気生理学的検査で心室細動/ 持続性心室頻拍が誘発される無症候性の心事故発生率は
5 %/ 年と高く,自然のST上昇があれば7 %/ 年,さらに失神を伴えば14 %になると報告している.一方,Priori らは多形性心室頻拍・心室細動誘発は必ずしも有用
な予後指標ではないとし,臨床症状と不整脈誘発性は無関係と報告している.また自然のタイプ1 ST 上昇がなく,薬剤で初めてタイプ1 に移行する例の予後は良好
であり,SCN5A 遺伝子の変異があっても薬剤負荷でタイプ1 に移行しない例は予後が良好と報告されている(Brugada 症候群の心電図タイプについては後述〈16
㌻〉を参照
II. 総論 > 3. Brugada症候群の概論 > 3.3 Brugada 症候群の予後
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【ダイジェスト版】
QT延長症候群(先天性・二次性)とBrugada症候群の診療に関する
ガイドライン(2012年改訂版)

Guidelines for Diagnosis and Management of Patients with Long QT Syndrome and
Brugada Syndrome( JCS 2012)