現時点で知られているBrugada 症候群の心臓電気生理学的特徴を以下に列挙する.なお,Brugada 症候群の心電図は欧州および米国Heart Rhythm 学会による
タイプ1,タイプ2,タイプ3 に分類し,Brugada 症候群のうち,症状(心停止,多形性心室頻拍・心室細動あるいは原因不明の失神)を伴う例は有症候性Brugada 症候
群,症状のない例は無症候性Brugada 症候群として取り扱う.
①心室プログラム刺激試験により,高率に心室細動が誘発されるが,誘発率は無症候例より,有症候例で高率である.
②刺激部位によって誘発性が異なり,右室心尖部よりも右室流出路でより誘発されやすい.
③期外刺激法により,右室流出路における伝導遅延の所見がみられることがある.
④自律神経系作動薬が誘発性に影響する.
⑤心室細動の誘発を抑制する薬剤として,一過性外向きK+ 電流(Ito)を抑制するキニジンが有効とする報告がある.
⑥無症候性Brugada 症候群のリスク層別化には心室プログラム刺激試験 の評価は定まっていない.Brugada らは,心室プログラム刺激試験 により,心室細動を誘
発する患者は心事故を起こしやすいとして心室プログラム刺激試験の有用性を述べているが,他の報告では,同様の所見は得られていない.これは,Brugada らの
報告を除くと,これまでに行われた数年の経過観察期間ではいずれも良好な経過を示しているからである.
⑦洞不全症候群や心房停止を合併した症例の報告もある.
⑧His-Purkinje系の伝導時間を反映するHV 時間が延長(≧55 msec) している例が認められる.無症候例より有症候例で,および心室プログラム刺激試験 による心
室細動非誘発例より心室細動誘発例でHV 時間の延長例が多い.またSCN5A の遺伝子異常が認められる例にHV 時間の延長例が多いことも報告されている.し
かし,無症候例でHV 時間の延長がハイリスクであるというエビデンスは得られていない.
⑨心房プログラム刺激により,心房細動が誘発されやすく,心房の受攻性が高まっていることが報告されている.そのほか,房室結節リエントリー性頻拍,心房頻拍,
多形性心室頻拍,副伝導路症候群の合併がみられる.