2. 心電図判断の基準
VI. Brugada症候群の診断 > 2. 心電図判断の基準
 Brugada 症候群の心電図の特徴は,同一症例でST 上昇の形態がcoved 型からsaddleback 型あるいはST 上昇が顕著でなくなるように変化することである.

 Wilde らによる2002 年のコンセンサスレポートではV1~V3 誘導のJ 点が2 mm以上を示すST 上昇で,タイプ1 は,ST 上昇波形がcoved 型を示す場合,タイプ2 と
タイプ3 はsaddleback 型を呈し,それぞれST の終末部が1 mm 以上あるいは1 mm 未満の上昇を示す場合とした.また,タイプ1 でcoved 型のST 上昇波形は,そ
の特徴をST 部分が徐々に下降する(gradually descending)という説明で定義づけられた.さらに,2005 年のコンセンサスカンファランスの報告では,タイプ3 はST 上
昇波形がcoved型かsaddleback型のどちらかを示す場合としていた.2012 年のLuna らによるコンセンサスレポートではV1~V3 誘導のQRS-T 形態において,タイプ1
をcoved 型ST上昇とし,タイプ 2 をsaddleback 型ST 上昇の2 つに大きく分けている.

 Brugada 症候群の診断に関しては,タイプ1 の心電図(薬剤投与後の場合も含む)が右胸部誘導の1 つ以上に認められることに加え,①多形性心室頻拍・心室細動
が記録されている,② 45 歳以下の突然死の家族歴がある,③家族に典型的タイプ1 の心電図を認める者がいる,④多形性心室頻拍・心室細動が心臓電気生理学的
検査によって誘発される,⑤失神や夜間の瀕死期呼吸を認める,のうち1 つ以上を満たすもの,としている.心電図がタイプ2,3 の場合は,薬物で典型的なタイプ1 に
なった症例だけ上記の診断基準にあてはめている.わが国では,失神などの症状や多形性心室頻拍 ・ 心室細動が認められた場合を有症候性Brugada 症候群,特
徴的な心電図で発作を起こしていない場合は無症候性Brugada 症候群に分類することが多い.

 負荷試験の心電図診断(判定)については負荷試験の項(18 ㌻)参照
次へ
 
【ダイジェスト版】
QT延長症候群(先天性・二次性)とBrugada症候群の診療に関する
ガイドライン(2012年改訂版)

Guidelines for Diagnosis and Management of Patients with Long QT Syndrome and
Brugada Syndrome( JCS 2012)